2012年1月10日火曜日

「愛(うつく)しき言つくしてよ」___聞かせてよ、愛のことばを

プロフィールで紹介したように、わたしが一番好きな歌は「昭和枯れすすき」である。二番目に好きな歌は「愛のさざ波」で、私のミーハー偏差値が確認されると思う。でも、好きなものは好きなのだ。歌は、恋の歌でなくっちゃ歌じゃない、と思っている。いまの歌は、恋の歌なのかどうか、私には、耳をすませないと歌詞を聞き取れないものが多くて、よくわからない。でも、恋の歌は昔にくらべると少ないような気がする。それで大丈夫なのか、この国は、と危惧している。歌は「うた」であり、「訴ふ」なのだ。絶対的な他者である男と女が、絶対的な他者であるがゆえに求めあうのが「こひ(=魂を乞う)」であり、求めても埋められない断絶をのりこえるために「うた」う=「訴ふ」のに。恋の歌が少なくなっているという現象は、共同体の生命力が衰えていることを示しているのではないか。

 今日は時間がないので、私が一番好きな恋の歌を『和泉式部日記』から一首紹介します。
「夜もすがら 何事をかは思ひつる 窓うつ雨の音を聞きつつ」___一晩中窓にうちつける雨の音に耳をすませていました。そしてただひたすらあなたのことを思っていました。
恋人であった帥の宮と交わした贈答歌のうちの一首であるが、独立した歌として、ほとんど何の説明もなく理解できると思う。ことさらな媚態もなく、思わせぶりな拒絶もない。自己の内面に沈潜していく心をそのまま詠んだ歌であると思う。

 二番目に好きな歌をもう一首。
「恋ひ恋ひて逢へる時だに 愛しき言つくしてよ 長くと思はば」___焦がれ焦がれてやっと逢うことができたこの時だけでも、恋のことばを聞かせ続けてくださいね。二人の関係がずっと続いてほしいと思うなら。
こちらは萬葉集巻四大伴坂上郎女の歌。娘の坂上二嬢(おといらつめ)の代作をしたものといわれている。経験をつんだ恋のベテランが、若い男に直球勝負で交情の持続を要求したものだ。さすが!と脱帽である。

 三番目に好きな歌は・・・・と続けているときりがないので、この辺で今日はおしまいにします。
今日も最後まで読んでくださってありがとうございます。

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