2011年12月27日火曜日

『子うさぎましろの話』の話

今日もクリスマスの話。これじゃ、気分はいつもクリスマスですね。で、今日は読書感想文なので、常体の文章でいきます。

 遥かな昔、子どもたちに読んできかせた美しい絵本がある。『子うさぎましろの話』で、佐々木たづさんという作家の比較的初期の作品だったように思う。

 クリスマスの日に、サンタさんからもらったケーキをペロリと食べてしまった子うさぎのましろがもっとほしくなって、「まだプレゼントをもらっていない」と嘘をついてサンタさんにせがむ。困ったサンタさんが「もう残っているのはこれだけだから」とモミの種をましろにくれる。そうすると、ましろは、自分が嘘をついたことが恥ずかしくなり、モミの種をサンタさんに返そうとするが、返せなくなってしまったので「そうだ、これは神様にお返ししよう。神様からもらったものだから」と雪を掘って、地面の中に埋める。翌年、雪がとけてモミの種は芽生え、何年かすると、立派な木になりましたという童話である。

 いまこの童話を思い返して(読み返してではない。記憶を頼りにストーリーを反芻している)、しずかに感動している。ここには、「一粒の麦地において死なずんば…」の壮烈な意志も、宮沢賢治の禁欲的な献身もない。素朴で自然な反省と行為があるだけだ。おいしいものはもっとほしい。でも、「もっと」はもらえない。ほしいからって、嘘をつくのは恥ずかしいことなのだ。それでも神様は「ほしがった」ものとは違うけれど、さらにプレゼントをくださった。だから、それを、自分のために使うのではなくて、「神様にお返ししよう」と、ましろは思うことができたのだ。

 作者の佐々木たづさんが、高校時代に失明し『ロバータさあ歩きましょう』という随筆でエッセイストクラブ賞をもらったという経歴をつけ加えるのは、まったくの蛇足である。珠玉のような童話をいくつも紡ぎだしたのは、彼女の失明という体験によるのではなく、状況の中で耳を澄ませて自分の生きる道しるべを求め続けたほんとうの「信仰」のたまものだったのだろう。
 
 それでも、人は、もちろん私も含めて「もっと、もっと」ほしがるのだ。あるいは「ほしい」気にさせられてしまうのだ。なぜか?そしてどうすればいいのか?・・・・・・

 と、いうようなことを、試行錯誤、寄り道しながら、このブログで考えていこうと思っています。
最後まで読んでくださってありがとうございます。

7 件のコメント:

  1. 『子うさぎましろの話』
    すてきな童話ですね。

    我が家は『だるまちゃんとかみなりちゃん』でした。

    かみなりちゃんが空から落ちてくるページのまえで、
    一呼吸、間をおいて、ページをめくると同時に、
    『ドッシーーーン』と大声を出して、吃驚させ、
    さらには、読み手もだるまちゃんと同じように、
    床にひっくり返って、悶絶して見せたのが大いに受けたのです。

    しずかに感動する童話の世界とは程遠いです。
    今さらながら反省です。
    こういう童話を聞いて育った我が家の子供たちも、
    なんとか無事に大人になって家庭をもちました。

    『子うさぎましろの話』は、
    孫に読んであげたいと思いました。

    作品の魅力を伝えるのが上手ですね。
    これからも、いろんな文芸作品を紹介して下さい。
    愉しみにしております。



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  2. 過分なお褒めのコメントにちょっと恥ずかしい気がします。
    『だるまちゃんとかみなりちゃん』を絵本の読み聞かせの動画でのぞいてみました。柔らかなタッチでゆっくりしたリズムの語り、こどもの世界があたたかく描かれていてすてきですね。体を張って(?)読み聞かせしたというのもすごい!
    我が家は「しずかに感動するお話」を聞いて育った子たちが、いまは立派にヘンな大人になっています。
    ところで文学愛好者さんは、ご自分ではお書きにならないのですか⁇

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  3. いつも返信ありがとうございます。

    今年から、時間が出来たこともあり、
    これまでただ漫然と読んでいたのを、
    すこしばかり真剣に読むよう心がけています。

    書く方については、
    毎月エッセイひとつ、
    を目標にして修行中です。
    まだまだです。

    naokoさんのエッセイは、
    どれもよく練られていて、
    推敲が行き届いていることを感じます。
    敬服しています。

    お手本にしております。













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  4. 毎月にひとつのエッセイを是非拝見したいと思います。
    私自身は、ブログを書きながら自分の才能のなさに絶望しつつ、「今はここまでしか書けない!」と開き直って公開しています。

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  5. ありがとうございます。

    私のエッセイは、
    まだまだ、お見せできるような代物ではないのですが、
    naokoさんのような高い水準の筆者から、
    作品を批評をいただけるなら大いに勉強になります。

    私はブログをやっていないので、
    どのようにしてお見せすればいいでしょうか?
    このコメント欄に入力すると、
    ほかの人にも公開されてしまいますか?

    散歩していたら、こぶしが咲いていました。
    うれしい朝です。












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  6. このコメントは投稿者によって削除されました。

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  7. 私も、近い将来、自分のブログを立ち上げたいです。

    今回は、たいへんお手数ですが、
    メールアドレスを案内させていただきます。

    ご親切に感謝いたします。

    ynov08@yahoo.co.jp








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